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「より多く試合をして、より多く稼ぐ」 ー英フットボールとテレビ放送(Birkbeckセミナー)

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昨年のアカデミックイヤーに参加したBirkbeck Sport Business Centreのセミナーは、2015-16年も定期的に開かれている。10月19日の回は「Football & Television: A Marriage of Convenience?」と題し、イングランドのフットボール史がテレビ放送とどのような関係で発展してきたか、広告会社〈Saatchi & Saatchi〉の出身で、FAのコンサルティングをしてきたAlex Fynnをゲストに開かれた。

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歴史的な背景としては、イギリスでテレビ放送が本格的に普及したのは第二次世界大戦後で、1953年のFA Cup決勝が、イギリスで初めて全国的にテレビ放送されたスポーツプログラムとされている。この決勝はStanley Matthewsという名選手の活躍によって”Matthews’ Final”とも呼ばれ、歴史上の一部になっている。その後1960-70年代に、BBCの週末のリーグ戦&カップ戦のハイライト番組「Match of the Day」が人気を博し、80年代にITVも同様のプログラムを提供し始めた。



これに続く1990年代に、プレミアリーグ創設による大転換期を迎える。1990年W杯でのイングランド代表の成功(4位)を背景に、フットボールのテレビコンテンツとしての価値に目を付けたメディア、そして主要クラブの商業的な関心が重なって、22クラブがFootball Leagueから離れる形で、FA Premier Leagueが発足した。この時代のBig 5と呼ばれるクラブが、Man United, Liverpool, Everton, Tottenham, Arsenalであったことも興味深い。当初ITVがこの設立に関与していたが、最終的にはBSkyBが放映権を買い取り、衛星放送による独占放送が始まった。当時イギリスではテレビ番組のサブスクリプションは普及していなかったが、リーグが決断を下したのは、この分野で先行していたアメリカの結果が後押しになったという。曰く、サブスクリプションが成功するコンテンツは「スポーツ、映画、ポルノ」の3つなのだ。

1995-96シーズンには、リーグは20クラブへと削減される。これは、「Every game is meaningful」という原則に基づくとAlexは言う。イングランド全体のオーディエンスに対してテレビ放映を行うという点において、ビッグクラブ同士の対戦、地域のダービーマッチ、優勝以外のインセンティブなど、「観られる」コンテンツを追求する必要があったのだ。彼は、「Television event is not sport event」とも話していたが、ローカルの試合を単純に全国放送にするのでなく、より広いオーディエンスが興味を持つリーグ全体の仕組み造りが必要だったのだ。現在で言えば、1-4位はCL、5-6位はEL、7位もFA Cupとの兼ね合い次第でヨーロッパの舞台で戦う権利を得る。一方、下位3チームはChampionshipへ自動降格となる。半数のチームが、リーグの最後まで関心を持つ仕組みになっている。

これらのテレビ放映とフットボールの発展は、商業的な観点からすれば非常に正しい。プレミアリーグの放映権料が契約回ごとに上昇しているのは周知の通りだ。ただし、それが社会的な正当性を伴うかは別途判断される必要がある。Alexは、現在のプレミアリーグを「International league played in England」と表現し、外国人オーナーのクラブで、外国籍選手がプレーするリーグだと説明を加えた。また、リーグに加えて国内外のカップ、そしてもしかするとプレシーズンや代表戦も暗示しているかもしれないが、彼はFAの哲学をこう表現した ー「Play more games, earn more money」。

彼が参考文献として彼が勧めていたのが、「From the Back Page to the Front Room: Football’s Journey through the English Media」 (Domenghetti, 2014)。これは年末に日本に帰るフライトの内で読み通そうと思う。

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