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Birkbeckセミナー: イングランド下部リーグが示す、フットボールクラブの「本当の価値」

BKK
Birckbeck Sport Business Centreのセミナー、前回「フットボールと消費文化」に続いて参加したのは「イングランド下部リーグのフットボールクラブビジネス」。ゲストスピーカーはRyan McKnight (@fcryan)で、彼はStockport County (当時5部相当リーグ所属)の元CEO、そしてPort Vale FC(現在3部相当)の現コンサルタントとして、プレミアリーグとは異なった景色を見せてくれた。

まず大局として、プレミアリーグの下部にあたるFootball League(2部〜4部相当、計72クラブ)では過去6年で観客数が7%落ちている。3割以上のクラブは昇格したことがあり、その90%以上は観客数の伸びを経験したが、逆に昇格を逃すと観客数が落ちる傾向にある。更に興味深いのは、そうしたクラブではチケット価格を下げても観客数の減少には歯止めをかけられないということだ。以上から、(1) クラブと観客の間には(需要と供給や費用対効果のような)経済面以外の力が働いている、そしてその不満により、(2) 観客数の減少が起こっている、と彼は分析した。

その原因として彼が提起したのが、(I) クラブの均質化、(II) スポンサーシップの悪影響、の2点で「スポーツとビジネスの衝突」と表現した。つまり、フットボールの国際的な商業化/大衆化によるローカルサポーターとの結びつきの弱まりを指摘している。現代フットボールは、外部の資本が入り、コーポレートスポンサーが付き、メディア放送は海外まで広がった。国際的なファンベースができ上がり、選手はサポーターの年収を週単位で稼ぐようになり、チケットは値上がりし、テレビは衛生放送でないと見られなくなった。クラブはサポーターの手から離れてしまい、彼らは単なる消費者となってしまった。

この現状における一つの着眼点は、クラブがいかにサポーターとの関係を築いていけるかであり、サポーターのクラブへの参加/参画として「ファンオーナーシップ」が議論されている。つまり、サポーターがクラブを所有することで、物理的にも心理的にもクラブとの関係性が深まるというアプローチだ。それらの実例として紹介されたのが、AFC WimbledonとFC United of Manchesterだった。

AFC Wimbledonは、2002年に組織されたクラブで現在Football League Two (4部相当)に所属している。元々WimbledonにはWimbledon FCが存在していたが、2002年にクラブがMilton Keynesに移転したことによって(これが後のMK Donsとなる)、それに反発した多数のサポーターをベース作られたクラブである。以下のビデオはその歴史をよくまとめている。


一方FC United of Manchesterは、よりサポーター主導で生まれたクラブ。Manchester Unitedが2005年にアメリカ人実業家Malcolm Glazorに買収されたのを契機に、一部のサポーター達が離反して新たに組織したクラブ。サポーターが出資/所有して、非営利のクラブとして運営されている。特にユニークなのは、クラブオーナーのメンバーシップが一人一口のみで、社会主義的に全員が平等であること。これにより特定の人物や組織の影響を抑えて「サポーターによるサポーターのためのクラブ」を実現している。もちろん意思決定の困難さや資本規模の小ささという弊害も予想できるものの、現在はクラブ規模が小さいのでまだ問題ではないのかもしれない。ともあれ、10年前にサポーターがゼロから作ったクラブが、National League North (6部相当)まで上がり、今年には4,000人規模のスタジアムを£6.5m (約12億円)を集めて自前で建てるなんて、夢のような話だ (BBC)。以下のドキュメンタリーは必見。


Ryanの前職Stockport Countyでの話が忘れられない。「クラブのサポーターに90歳の女性が居た。彼女には4世代の家族があって、日曜日のフットボールの試合が、唯一、彼ら全員に会える時間だったんだ。」クラブは、サポーターとの幸せな関係を見つめ直さないといけない。

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