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「IOC オリンピックを動かす巨大組織」(猪谷千春)

IOC
IOC(International Olympic Comittee)は言わずもがなオリンピックの統括組織ですが、その組織の内情やIOC委員の職務について、自身の経験を基に自伝的に書かれている点で非常に価値の高い一冊です。

著者はIOC委員を長く努められた猪谷千春氏。約30年の任期中、10を超えるの夏季・冬期オリンピックの開催と1998年の長野オリンピック招致を経験、さらにIOC自体のマネジメント層とも言えるIOC理事を務め、前任のサマランチ氏と現職のロゲ氏といった両会長とも時を同じく活動されて、IOCを熟知する日本人の一人と言えます。

オリンピック関連の書籍では、「オリンピックと商業主義」(小川勝)は、スポーツライターの著者がオリンピックの歴史を遡り、1896年の近代オリンピック開催から現代まで、大会の特徴や商業面について細やかに紹介していますが、本書はより経験的で叙述的な内容で、IOC内部の雰囲気さえ伝わってくるかのようでした。

本書の中で触れられていて、きちんと目を通しておきたかったものの一つ目は、長野オリンピックの開会セレモニー。以下が長尺ですがYoutubeです。



長野オリンピックの開会セレモニーは、日本的な趣向を凝らした演出。善光寺の鐘の音で始まり、諏訪地方の踊りに続いて、行事と力士が登場。これについて本書ではその裏側も語っています。

実はこの演出に、IOCサイドからクレームが付いた。これは神事であって、宗教色を廃するというオリンピックの決まりに反するのではないかということだった。(略)「チックはどう思うか」何人ものIOC委員から意見を求められた。私はそのたび「日本の文化として理解してもらいたい」と答えた。日本らしい演出によって他国からのお客さんを迎えるのは素晴らしいことではないか。結局、この演出は黙認され、選手たちにはたいへん好評だった。

もう一つは、2012年オリンピック誘致の際の、ロンドン招致委員会のSeb Coe氏のスピーチだったのですが、いくら探しても出てこず。フルバージョンはなく、以下のVideoにすこし入っているだけ。ご存知の方、教えてください。。



これに関しても、招致を決定的なものとしたプレゼンテーションについて、本書では以下のように触れています。

二〇一二年大会の開催地に選ばれたロンドンの勝因は、なんといっても招致委員会長のセバスチャン・コー会長(その後、ロンドン・オリンピック組織委員会会長)のプレゼンテーション演説だろう。(略)スポーツが持つ力を賛美し感謝するとともに、ロンドンを選手のための大会にしたいという思いを伝えた。さらに狂気が猛威を振るう世界で、なぜスポーツが大事か、二一世紀になぜオリンピック思想が大事なのか、と訴えて大きな共感を集めた。

このプレゼンに関しては、関連記事も興味深いものが多いです。例えば:
WEB RONZA: ロンドン五輪、大逆転での招致を決めたもの
TOKYO Web: プレゼン制作のバーリー氏  ロンドン リオ 東京 招致請負人 3連勝

本書の言葉を借りれば、IOCはオリンピックを開催するだけの組織ではありません。「オリンピックムーブメントを推進すること。」この理念に向かって活動していくにあたり、Olympic Youth Games(OYG)という若年代向けのオリンッピックを新たに創設し、2010年にシンガポールで第1回を開催しています。これについては、個人的にも調べて行こうと思います。

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