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2015年7月 Monthly archive

Aegon
6月末にEastbourneで女子テニスの国際大会「Aegon International」が開催されたので行ってみたら、予想以上に面白くて観るテニスに完全にはまってしまった。

WTA (Women’s Tennis Association)によるEastbourneでの国際トーナメントは1974年から開催されていて、2009年からAegonがLTA (Lawn Tennis Association)のメインスポンサーになったことからAegon Internationalという名称になっている。Wimbledonの直前に行われる芝の大会で、そのウォームアップも兼ねた選手の出場もあることから「Pre-Wimbledon」とも呼ばれている。そんな歴史あるイベントに「家から近い(徒歩5分)」のと「無料(初日のみ)」だからという何とも消極的な理由で足を運んでみたら、かなり面白いじゃないか!という発見があった。

まずイベント視点で見れば、フェスティバル感のある雰囲気が素晴らしかった。よく手入れされた緑の芝が美しくて、グラウンドレベルのコートはそこに直接設営される。隣にはフード&ドリンクの売店があり、店先にはテーブル&チェアがテラス席として並んでいる。シャンパンが似合うのもテニスならではだ。テニスは試合時間が長く、さらに同じスタジアム/グラウンドで複数の試合が行われる。必然的に滞在時間が長くなるので、1日のDay-outとして考えるとチケット価格に対して得られる体験が多く、コスパが高いように感じた。これはWimbledonでも同じことが言える。

次にスポーツ的な観点では、テニスはルールと判定がとても明瞭だ。サーブを交互に打ちながら、決められたエリアでボールをラリーして、相手がミスをすれば得点が入る。基本的には15-30-40とポイントを重ねていってその次で1ゲームを取り、6ゲーム先取で1セットを取る。女子は2セット、男子は3セット先取で試合の勝ちが決まる。同ポイント/ゲーム/セットの場合は延長になるという例外があるだけだ。試合には主審の他に線審が5人居てボールのIn/Outのジャッジを行う。Wimbledonになれば映像でも判定する。フットボールでは考えられない。

加えて、テニスのプレー経験が(少しとはいえ)あったのは、競技レベルを理解するのに役立った。テニスは高校の体育で触れただけだったけれど、ボールを打つのにどれだけ正確性が求められるか、前後左右のフットワークがどれだけハードか、ラケットを振り続けるのがどれだけ利き手に響くか。自分の体験をもとに、凄まじいほどプロはレベルが高いとイメージができた。学校体育の影響力はなかなか侮れない。

最後にファッション的に見れば、選手の出で立ちが綺麗なこと。予想するに身長がアドバンテージになるスポーツなのでスタイルが良い選手が多いし、ユニフォームのデザインも一層それを際立たせている。決してSexist的な意見ではなくて、キレイ/カッコイイという感覚に響くものはファッションとしての価値をもたらすので、普及という観点からするととても大事なことだ。ランニングブームをファッショナブルなウェアが支えているのに通じるものがある (日経Trendy)。Naomi Broadyは弟のLiamと共に兄弟で活躍するBritishの若手プレーヤーで(二人とも今年のWimbledonにWild Cardで出場している)彼女のInstagramはとてもBritishの女の子っぽくて良い。

I love this view so much #AegonInternational #Tennis #Eastbourne

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全体の眺めはこんな様子。Centre courtとCourt 1はスタジアムで固定席、Court 2-5はグラウンドレベルで観客がパイプ椅子で周りを囲む。この上位コートはスタジアム、下位コートはグラウンドで行う形式はWimbledonも同じ。


グラウンドレベルのチケットはとにかくコートの近さが凄い。ボールを弾く音や審判の声はもちろん、選手が審判やボールボーイ/ガールに話す言葉まで聞き取れる。真剣勝負の選手達はエキサイトしているので、割と文字に起こせないことも口にするのには驚いた。

Day one for qualifying tournament #AegonInternational #Tennis #Eastbourne

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ボールボーイ&ガールの動きも好き。彼らはこんなにも必要以上にきびきび動く必要があるのだろうかと疑問ながらも、その様子が微笑ましくも思ってしまう。まるで機械のような動作とシステマチックな連携で試合をサポートしている彼らには賞賛しかない。

Wherever host countries are, people are patriotic. Huge advantage for GBR! #AegonInternational #Tennis #Eastbourne

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Britishのプレーヤーに歓声が集まったのも印象的。この日はピンクユニフォームのLaura Robsonへの注目度が特に高かった。彼女は元British No.1のランキングで、17ヶ月の手首の怪我からの復帰戦がこのAegon Internationalだった。やはり誰でも母国のプレーヤーへのシンパシーは強い。

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BKK
Birckbeck Sport Business Centreのセミナー、前回「フットボールと消費文化」に続いて参加したのは「イングランド下部リーグのフットボールクラブビジネス」。ゲストスピーカーはRyan McKnight (@fcryan)で、彼はStockport County (当時5部相当リーグ所属)の元CEO、そしてPort Vale FC(現在3部相当)の現コンサルタントとして、プレミアリーグとは異なった景色を見せてくれた。

まず大局として、プレミアリーグの下部にあたるFootball League(2部〜4部相当、計72クラブ)では過去6年で観客数が7%落ちている。3割以上のクラブは昇格したことがあり、その90%以上は観客数の伸びを経験したが、逆に昇格を逃すと観客数が落ちる傾向にある。更に興味深いのは、そうしたクラブではチケット価格を下げても観客数の減少には歯止めをかけられないということだ。以上から、(1) クラブと観客の間には(需要と供給や費用対効果のような)経済面以外の力が働いている、そしてその不満により、(2) 観客数の減少が起こっている、と彼は分析した。

その原因として彼が提起したのが、(I) クラブの均質化、(II) スポンサーシップの悪影響、の2点で「スポーツとビジネスの衝突」と表現した。つまり、フットボールの国際的な商業化/大衆化によるローカルサポーターとの結びつきの弱まりを指摘している。現代フットボールは、外部の資本が入り、コーポレートスポンサーが付き、メディア放送は海外まで広がった。国際的なファンベースができ上がり、選手はサポーターの年収を週単位で稼ぐようになり、チケットは値上がりし、テレビは衛生放送でないと見られなくなった。クラブはサポーターの手から離れてしまい、彼らは単なる消費者となってしまった。

この現状における一つの着眼点は、クラブがいかにサポーターとの関係を築いていけるかであり、サポーターのクラブへの参加/参画として「ファンオーナーシップ」が議論されている。つまり、サポーターがクラブを所有することで、物理的にも心理的にもクラブとの関係性が深まるというアプローチだ。それらの実例として紹介されたのが、AFC WimbledonとFC United of Manchesterだった。

AFC Wimbledonは、2002年に組織されたクラブで現在Football League Two (4部相当)に所属している。元々WimbledonにはWimbledon FCが存在していたが、2002年にクラブがMilton Keynesに移転したことによって(これが後のMK Donsとなる)、それに反発した多数のサポーターをベース作られたクラブである。以下のビデオはその歴史をよくまとめている。


一方FC United of Manchesterは、よりサポーター主導で生まれたクラブ。Manchester Unitedが2005年にアメリカ人実業家Malcolm Glazorに買収されたのを契機に、一部のサポーター達が離反して新たに組織したクラブ。サポーターが出資/所有して、非営利のクラブとして運営されている。特にユニークなのは、クラブオーナーのメンバーシップが一人一口のみで、社会主義的に全員が平等であること。これにより特定の人物や組織の影響を抑えて「サポーターによるサポーターのためのクラブ」を実現している。もちろん意思決定の困難さや資本規模の小ささという弊害も予想できるものの、現在はクラブ規模が小さいのでまだ問題ではないのかもしれない。ともあれ、10年前にサポーターがゼロから作ったクラブが、National League North (6部相当)まで上がり、今年には4,000人規模のスタジアムを£6.5m (約12億円)を集めて自前で建てるなんて、夢のような話だ (BBC)。以下のドキュメンタリーは必見。


Ryanの前職Stockport Countyでの話が忘れられない。「クラブのサポーターに90歳の女性が居た。彼女には4世代の家族があって、日曜日のフットボールの試合が、唯一、彼ら全員に会える時間だったんだ。」クラブは、サポーターとの幸せな関係を見つめ直さないといけない。

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CB
4月に開かれた大学のスポーツジャーナリズムセミナーは、Clare Baldingがゲストで登壇した。メディアの第一線で活躍する人物がわざわざ足を運んでくれるのも、大学ならではの特権。

University of Brightonはスポーツ社会学/ビジネス系のコースがEastbourneキャンパスに集まっていて、毎年スポーツジャーナリズムのセミナーを開いている。せっかくの機会だし、無料だし、メディア側の視点からの話を楽しみに出席してみた。会場には学生から教授陣まで、学部生からPhDまでがずらりと揃んでいて、さすがの大盛況ぶり。

Clare Baldingは、イギリスにおいて著名な女性スポーツジャーナリストで、BT SportとBBCで放送されている番組「Clare Balding Show」のプレゼンターとして特に有名。直近では、先週から開催されているWimbledonで、BBCの「Wimbledon 2Day」を担当していて、毎日現場からのレポートを届けている。

話を聞く限り、トップレベルの選手やコーチへのインタビューは彼女の特長でもあって、例えば「時に、マイクを向けるだけで相手は話し出す」という実務的な経験談は納得したし、「イベント会場の警備員はある時あなたを助けるから、いつもナイスでいなさい」というアドバイスには皆笑っていた。ロンドン五輪ではそれによって通常できないような場所でインタビューを成功させたという。



これは「Clare Balding Show」でF1ドライバーのLewis Hamiltonを迎えての一幕。この番組は、通常3名/組のスポーツ選手を順々に迎えて、スポーツ内外についてトークを繰り広げる。日本の番組のような企画演出やテロップ、フリップボードなんてないので、如何にプレゼンターの力量が必要か感じられると思う。

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